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トップページ  2023.4.物価上昇分増えなくなった年金について 

今回は「超少子化と超長寿化が年金に及ぼす危機的な内容」について少しお話ししたいと思います。

日本の年金というものは、消費者物価総合指数だけでなく現役世代の賃金変動率、即ちマクロ経済スライド(労働人口変動率、少子化で税・保険料の減少)・平均余命の伸び(高齢者の増加と受給期間の延び)も影響して算出されます。

①2023年度の年金は、67歳以下は2.2%増額、68歳以上は1.9%増額と報道されていますが…下記データをご覧ください。







2023年に入ってからの物価上昇率は3%から4%ですが年金は前年の物価上昇率2.5%を用いて 計算するため、実際の生活自体は苦しくなります。 また、新規裁定者は手取賃金変動率2.8%、既裁定者物価変動率は2.5%を用いて改訂するため、今年は年齢で増え方に違いも生じます。

②2022年の年金は0.4%減額でしたが、年金は0.2%貰いすぎでした。 現役世代の賃金下落率が▼0.4%と、物価下落率(▼0.2%)より大きくなり、現役世代とのバランスをとった賃金下落率で年金を算出しましたので、ここまでは世代間で公平です。しかし、物価がマイナス時の「マクロ経済スライド」は、物価がプラスになるまで繰り越さ れる規則のため▼0.2%が導入されず、さらに2021年度の調整(▼0.1%)も繰り越されたため、年金受給者は0.3%多く受給していたことになります。

2023年の年金額調整の計算式
2023年度の特色は、新規裁定者と既裁定者で算出ベースが物価変動率と名目手取賃金変動率に分かれる点です。
平均余命の伸び率分として毎年0.3%定率でマイナスされています。 下表※2. ※3. ※4から、年金保険料の負担者が増えると0.3%マイナス分が緩和されることがわかりますが、2023年度は物価上昇したため、過去2年分の未調整分が加算され0.6%マイナスされます。保険料負担者の減少と年金受給者の増加と長期受給が大きく影響しているのです。

※1実質賃金変動率2019-21年度平均0.3%+2022年物価変動率2.5%+2020年度可処分所得割合変動率0.0%
※2 公的年金被保険者総数の変動率0.2%(2017-19年度平均)+平均余命の伸び率▼0.3%(定率)
※3 公的年金被保険者総数の変動率0.1%(2018-20年度平均)+平均余命の伸び率▼0.3%(定率)
※4 公的年金被保険者総数の変動率0.0%(2019-21年度平均)+平均余命の伸び率▼0.3%(定率)

その結果、年金はインフレ分増加しなくなったため、不足を補う準備が必要になり、このことから少子化を止める政策実現の急務と、高齢者も出生率の低下に危機感をもつ必要があるということがわかります。

本日のおはなしは以上でした。 また、新しい情報がわかり次第お届けいたしますのでお楽しみに!