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[5]雇用・労災保険と労働基準法などの法律

雇用保険・労災保険・労働法の2022年度改正
⑴雇用保険
雇用保険マルチジョブホルダー制度新設
雇用される65歳以上労働者が、併せて週20時間勤務、雇用見込み期間31日以上あり、事業主が証明書を記載し、本人がハローワークに申出た日から雇用保険に加入できます
雇用保険料率の引上げ(10月以降)
コロナ禍で、失業給付・雇用調整助成金が増加し、積立金4兆円が500億円まで減少したため、保険料を引き上げます


求職者給付の基本手当、退職理由別の受給期間
特定理由離職者※の暫定措置が終了 ※体力減退、疾病・負傷、妊娠・出産・育児、介護、通勤不可能、優遇のない人員整理などで退職した人が対象でした
育児休業
a.有期雇用の雇用契約1年規定を廃止 (1年6か月以内に契約満了がない場合)
b.パパママ育休プラスは、2回まで分割取得可能です
c.「産後パパ育休」を新設
育休とは別に、出生日・予定日から8週間以内に4週まで取得できます(分割2回まで)。休業中の就労は一定割合まで可能(労使協定で決める)
d.厚生年金と健康保険の保険料免除
*月内で短期取得の場合、通算2週間以上で免除されます
*賞与の保険料は1か月超の取得者に限り免除されます

⑵労災保険
特別加入できる新規職種
芸能従事者・アニメーター・柔道整復師・自転車配達員・ITフリーランス・歯科技能士・はり師・あんまマッサージ師・きゅう師
新型コロナ感染の後遺症も対象:特例で企業の保険料割増はありません

⑶労働関連法
パワハラ防止法:中小企業も対象になります
最低賃金引上げ:全国平均961円、東京1,071円になります(2022年10月)

1.雇用状況
失業率:2.6%  15-24歳は4.0%と高くなっています
有効求人倍率:1.21倍、都道府県により0.79-1.91倍の格差があります
IT・AIを駆使した自動化・ロボット化:不要になる職種が出てきます
転職できるよう、補助金を受けながらスキルアップしておく必要があります

2.雇用保険
⑴目的・対象者・保険料率
目的:失業者の生活保障、早期就業支援、解雇・退職を防ぐ雇用の継続支援
対象:会社員など・私立学校教職員・船員、65歳以上も加入できます。短時間労働者の加入条件は、週20時間以上、31日以上の雇用見込みです
保険料率:1.0%(一般)を労使折半、事業主は二事業分0.35%も負担します(10月以降改正)

⑵失業給付(正式には求職者給付)
離職理由による給付期間の違い
a.自己都合退職:離職前2年間に12か月以上加入者に、給付制限2か月+7日後から、加入期間により90-150日まで給付されます
b.倒産・解雇と特定受給資格者
*離職前1年間6か月以上加入者に8日目から支給(待機期間7日)
*特定受給資格者:事業所移転により通勤不可能、労働契約と著しく相違、配慮のない職種変更など幅広く解釈されます
*年齢と加入期間により90-330日給付されます
c.就職困難者※:年齢と加入期間により150-360日給付されます※障害者・高齢者・1人親家庭の父母など
d.高年齢求職者給付:6か月以上加入した人が65歳以降に失業し、働く能力があって就職を希望する場合に給付されます。期間は就労1年未満なら30日、以上は50日です
失業手当額:年齢と賃金により2125円~8355円 (日額の45-80%)
職業訓練中は基本手当を給付します、最長2年
手当金:技能習得手当・通所手当・寄宿手当・移転費も給付されます
早く就職した人に就職促進給付
再就職手当、就業手当、常用就職支度手当を、残日数に応じて給付されます

⑶雇用継続支援
育児休業と子の看護休暇
a.同一事業所で2年間に12か月以上雇用された人が、1歳未満児の養育で休業した場合に給付されます(保育園に入れないなど、特別な場合2年まで延長)180日間は賃金の67%、以降50%
b.厚生年金・健康保険料が免除されますが、医療を受けられ、年金も減りません
c.パパママ休暇プラス・産後パパ育休・ 短時間業務・フレックスタイムなども利用できます
d.子の看護休暇:1人なら年5日、2人以上は10日間認められ、1時間単位で取得できます
介護休業と介護休暇
a.2週間以上介護状態の父母・配偶者・子・祖父母などを介護するための休業
配偶者の両親、同居以外も対象です
b.通算93日間休業でき、3回まで分割取得が可能で、賃金の67%を給付されます
c.看護・介護休暇:1人年5日、2人以上10日、1時間単位で取得できます
教育訓練給付
a.一般教育訓練:費用の20%・上限10万円が給付されます
b.特定一般教育訓練:費用の40%・上限20万円が給付されます
c.専門実践教育訓練:中長期的キャリア形成を支援する制度で期間は2-4年
費用の50%・上限年40万円、資格取得して就職すると70%・上限年56万円が給付されます大学・大学院通学も対象で、2584講座あります
高年齢雇用継続給付
a.5年以上加入者した高齢者が再就職した時、賃金が75%未満に低下した場合に給付
b.65歳になるまで賃金の0.88-15%を給付する制度(老齢厚生年金は0.35-6%減額)
c.高齢者の雇用支援が進んできたため2030年に廃止されます

⑷雇用保険二事業
雇用安定事業と能力開発事業
非正規のキャリアアップ、就職困難者の助成金、コロナ禍で失業を防いだ雇用調整助成金5兆円などがあります
保険料は事業主負担

⑸就業支援と雇用義務
女性の就業支援
a.女性活躍推進法企業が行動計画を策定して公開すると、認定マーク「えるぼし」を付与、採用活動などに利用できます
b.職場環境の整備、柔軟な働き方、長時間労働の見直しをすると、認定マーク「くるみん」を付与、採用活動などに利用できます
c.女性の働き方を阻害する壁:社会保険の壁(106万円・130万円)配偶者控除の壁(150万円 103万円・150万円)があります
若者の就職支援
a.地域若者サポートステーション、キャリア形成サポートセンター、ジョブカフェ
b.ジョブカードの活用、トライアル雇用、新卒扱い3年間、就職氷河期世代の支援
65歳まで企業に雇用義務
a.65歳年・定年廃止・継続雇用から選択、雇用されるスキルも必要です
b.高齢者に安全な職場の整備が不可欠です
c.中高年の人材バンク創設し、長寿化に合わせた70歳までの就業機会を確保します
第二のセーフティネット「求職者支援制度」
a.対象:雇用保険に未加入、自営廃業者、失業給付期間超、加入期間不足の人
b.支援内容は、手当月10万円・寄宿手当・通所手当支給・無料の職業訓練です(所得制限・資産制限があります)

  ⑹職業紹介・職業訓練
職業紹介ハローワークの紹介は無料、民間の職業紹介には無料と有料(多くは企業負担)
無料の職業訓練:誰でも受けられ、雇用保険加入者は失業手当を訓練中受給できます(定員あり)

2.労働者と遺族を守る労災保険
対象者:1日だけのアルバイトも対象、1人親方などには特別加入制があり、公務員は「公務員災害補償制度」に加入します
保険料仕事危険度に応じた料率を事業主のみ負担
厳しい労災認定 (ケガ・病気・過労・精神)
a.仕事が原因の就業中(待機中含)と、通勤中の傷病死を補償します
b.支給決定は申請数の1/4以下と厳しい
c.新型コロナ感染・石綿被害も対象です
d.通勤災害は寄り道すると対象外になります(生活行為を除く) 
給付の種類:治療費、休業給付・傷病年金、障害年金・介護給付、遺族年金・葬祭給付
副業補償 (2020年9月以降の労災)
副業での労災は、2事業の労働環境を合わせて認定、本業と合算して支給します
他の制度:二次健康診査(無料)、未払い賃金の立替払い、社会復帰促進事業(労災病院、アフターケア、特別支給金20%、就学援護費(保育から大学))などの制度もあります

3.健康で安全に働くための労働法の種類
労働基準法:労働条件の最低基準を定め、労働者を長時間労働などから守ります
法定労働時間、時間外労働の上限と割増賃金、賃金支払いの原則、休憩、年次有給休暇、 年少者・女性の保護などです
労働契約法:不当な解雇など労働紛争に対応します
労働安全衛生法:事業者の安全管理義務を定め、健康診断、作業環境管理、職業病の予防、パワーハラスメント防止法、ストレスチェックの義務化 などです
男女雇用機会均等法:男女の不当な差別を規制し、婚姻・妊娠・出産・育休による不利な扱いを禁止、セクシャルハラスメントの予防と対策義務を課しています
労働者派遣法:派遣は臨時的なもので、同一業務は3年までと定め、派遣も同一労働・同一賃金の対象です
パート労働法:短時間労働者の権利を守り・待遇を改善します
最低賃金法
a.地域別最低賃金(都道府県別)特定産業別最低賃金(都道府県で業種が異なる)があり、産業別が優先されます
bこの金額以下の賃金は罰金の対象になり、アルバイトも対象です
c.派遣の場合は派遣先の賃金になります
d.2022年10月以降、全国平均961円、東京1,071円です