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4.争いを防ぐ相続の知識
家族・親族の人間関係を壊すのが相続、死後では取り返しがつきません
法律を知り“争族”の未然防止を図ることは、人生最後の自己責任・遺族への思いやりです

2023年以降、相続関連の改正
1.戸籍謄本を本籍地以外でも取得可能(データ化された戸籍)。2024年3月1日
2.離婚後すぐの再婚後の出生は再婚後の夫の子と推定。2024年4月以降の出生から
3.遺産分割の制限:相続開始後10年過ぎると法定相続分で分割。ただし同意できれば任意 分割も可能。特別受益・寄与分は主張できない。2023年4月
4.不動産登記義務:不動産登記法の改正(以前の相続も対象)2024年4月。不動産取得を知った日から3年以内に登記義務。しなければ10万円の過料(正当な理由がある場合を除く)
5.所有権移転登記の登録免許税の免除 2025年3月まで延長
6.登録者の氏名・住所などの変更届の義務化:2026年4月までに施行。しなければ過料5万円。
7.相続土地国庫帰属法:2023年4月27日施行、5年後見直し。帰属条件は、建物・樹木・土壌汚染・廃棄物(地中含む)・崖などがなく、境界が明らかで係争がないなど。審査手数料1.4万円、許可されると管理費10年分の負担金。宅地・田畑・原野は1筆20万円


[1]相続人を守る法律

1.遺言があれば指定相続、なければ法定相続
遺言あり:優先されますが、相続人の差別はかえって争いの元になります
遺言なし:相続人は財産内容がわからず大変な思いをします

2.相続できる人の範囲と順序の把握


配偶者:常に相続人です
血族の優先順位
(胎児・養子・非嫡出子)父母兄弟の順
先順位者がいないと相続権が移ります
相続人から外せないケース
a.養子特別養子(15歳未満は実子、15-17歳は本人の同意) があり、養子は実親からも相続します
b.胎児(生まれたら権利)
c.認知した非嫡出子は実子と同割合
d.失踪中の相続人は7年で家裁が宣告、分割を待つ
e.事実婚の配偶者には、遺言による遺贈が必要

3.代襲相続になるケース
以下の場合、孫、甥・姪が相続します。生前に家裁に申立てるか、遺言に記載しておきます
相続人が死亡
相続人が欠格:先順位者の殺害・未遂、保険金目当ての詐欺・脅迫、遺言作成を妨害・取消・変更・強要(添え手含む)、遺言書の偽造・破棄・隠匿した場合
相続人の排除:被相続人に生前、虐待・重大な屈辱・著しい非行・賭博狂などの場合

4.遺留分と遺留分侵害額請求 遺族の生活を守る制度
遺留分 2.の表参照
a.配偶者のみ・配偶者と子ども・配偶者と両親・子どものみの場合は、法定相続分の1/2
b.配偶者と兄弟姉妹の場合、妻は1/2。兄弟姉妹には権利なし
侵害額請求(遺言で相続権を侵害された場合) 以下青字は相続法改正(2019-20年)
a.相続人と知ってから1年で時効(死亡より10年)内容証明郵便で意思表示(時効の中断)
b.遺留分侵害額に相当する金額の請求ができる(基本的に現金で渡す)
共有関係を回避、遺言者の意思の尊重。できない場合は裁判所に支払期限の猶予申請

5.相続する場合
単純承認:何もしないと承認したことになります
限定承認負債額が不明な場合、負債より相続財産が多い場合に相続できるが、相続人全員で家裁に手続が必要(3か月以内)

6.相続しない場合(借金も相続財産)
生前放棄:裁判所の証明書なければ無効
死後放棄相続を知ってから3か月以内、借金の取立から保護する制度です

7.遺産の分割方法
分割方法4種類
a.現物分割:資産毎に分割
b.代償分割:兄が家をもらい、弟に1/2分の現金払いなど
c.換価分割:売却して分配
d.共有 :別荘など、代が変わると所有者が増え分割困難になる
金額調整
a.遺言優先・特別受益者(生前贈与分)寄与分(財産増加・維持に寄与、同居で長期介護した場合)
b.特別の寄与の制度創設相続人以外の親族が無償で療養看護を行った場合、相続人に対して金銭の要求ができる(長男の妻など)
遺産分割協議書
a.死後の作成のみ有効(生前の念書は無効)、もめると家裁の調停・審判になる
b.未成年には特別代理人をつける
c.無効:相続人が1人でも欠けている(故意の除外、行方不明)、実印以外を使用、遺産評価に誤りがある、未成年の親族代理(親が子の代理をする)
遺産分割前の預貯金の払い戻し制度の創設
金額の1/3×法定相続分、1金融機関150万円まで
配偶者居住権の新設
a.自宅での居住を確保しつつ、その他の財産も取得できる
b.居住権は、耐用年数・経過年数・平均余命・複利原価率、敷地利用権評価などで算出
配偶者短期居住権:遺産分割が終了するまで無償で使用できる
遺産分割の期限(民法の見直し)2023年4月
相続開始から10年過ぎると、特別受益・寄与分は考慮されなくなる

8.相続人がいない場合
家裁が特別縁故者を10か月かけて探す:嫁・内縁の妻・事実上の養子など
国庫に入る:遺贈者を決めておく

[2]争族を防止する遺言の知識
1.遺言の主な種類と特徴(普通方式)

2.遺言が必要な場合
a.妻に全部残したい、特定の子どもに多く分けたい、先妻の子と後妻の子がいる、事業の 後継を指定、相続に条件をつけたい、未成年の特別代理人の指定
b.嫁に残したい、内縁の妻(特別関係人)・未認知の子に残したい
c.相続人がいない(特別縁故者の指定)、○○に寄付したい
d.借金がある、保証人・連帯保証人になっている

3.遺言でできること
身分 :非嫡出子の認知、未成年の後見人・監督人の指定
相続 :相続分指定、分割方法指定、相続人の廃除・廃除の取消、遺言執行者の指定
その他:財産処分・相続人以外に遺贈、寄付・公益信託設定
※エンディングノート(生前)に、尊厳死の希望、最後に会いたい人、葬儀の方法、葬儀に参列してほしい人などを記載しておくと、自分らしい最期を過ごせ、遺族も助かります。遺言では間に合いません

4.相続して欲しい「心」と「モノ」
子孫に残すもの:配偶者・子・孫の人生を狂わせない贈与・相続(不労所得)
社会に残すもの:世話になった所・人、基金の設立、最後の社会的役立ち・恩返し

5.信託銀行・弁護士の利用
争いが起きそうなときは、専門職に依頼し、人間関係維持を優先します

[3]相続税と節税対策

1.相続税をかける理由
富の再配分:本人の努力の他、社会の恩恵で築いた資産
所得税の補完徴収:働き方の違いによる控除の違いの修正
相続人には不労所得:所得税とのバランス

2.相続財産と相続人の把握
財産の把握・評価:相続税がかかるか、現金納付できるか確認します
相続人・遺贈する人の把握:遺産分割はスムーズにいくか予測します
合法的な節税対策:年月がかかるため早めに検討・実施します(二次相続まで予測)

3.相続財産の種類と評価方法デジタル遺産の管理にも注意
土地(宅地・田畑・山林)
a.路線価方式・倍率方式(固定資産税評価)で評価
b.借地権・貸家建付地も相続の対象
c.居住者を保護する「小規模宅地評価額の軽減特例」(居住用330㎡・事業用400㎡まで80%減額、貸付用200㎡まで50%減額)
建物
a.居住用(固定資産税評価額)
b.貸家・建設中の家屋(70%評価)
株式
a.上場株式
b.非上場株式
金融資産:預貯金・社債などの残高、外貨は円に換算、へそくり・無記名資産を含む
みなし相続財産
a.生命保険(死亡保険金・被相続人の払い込み保険料)
加入状況が不明の場合は、生命保険協会の「生命保険契約紹介制度」で調べる。利用料3000円
b.死亡退職金
会員権:ゴルフ・リゾート(70%評価)
動産:家財・美術品・貴金属・車・ヨットなど
事業用財産と分ける
相続人への3年以内の贈与、長期化を審議中
相続財産からマイナスできるもの
a.債務:保証人債務、住宅ローン等の借入金、クレジット等の未払金、医療・入院費
b.税金:所得税・住民税(1年遅れ)・固定資産税
c.葬儀費用

4.相続税がかからないもの⇒節税対策
墓・仏祭具・通常の香典・弔慰金
心身障害者共済給付金
死亡保険金:相続人一人あたり500万円
死亡退職金:相続人一人あたり500万円
寄付:地方公共団体・公益法人など (申告期限まで)
被害にあった財産:申告期限までに火災などの被害
損害賠償金:生前に受け取った交通事故などの賠償金、所得税も非課税

5.相続税の計算方法
まず法定相続割合で税額算出、実際の分割割合で税額を按分。相続人以外は20%加算
⑴控除の種類
基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数※養子は実子あり1人、実子なし2人まで
その他控除
a.配偶者控除:要申請、1億6千万円か法定相続割合まで非課税、未分割は仮納付
b.未成年控除:18歳未満まで年10万円税額控除
c.障害者控除:85歳未満まで年10万円・特別障害20万円税額控除
d.その他  :贈与税額控除・相次相続控除(10年以内の相続)・外国税額控除

⑵相続税の計算方法
遺産額:遺産総額+相続時精算課税の適用贈与財産-非課税財産-葬式費用-債務
正味の遺産額=遺産額+相続開始3年以内の贈与財産
課税遺産総額=正味の遺産額-基礎控除(3000万円+600万円×相続人数)
課税遺産総額を法定相続割合で案分、税率をかけて各自の税額を算出
a各自の税額を足して相続税の総額を算出
b税の総額を実際の相続割合で案分して個別の納税額を算出
各種控除後に課税:配偶者は1.6億円以内または法定相続割合内なら非課税
子の場合はそのまま課税、未成年・障害者は年10万円控除後に課税

6.申告と納税
申告と納税期間:相続から10か月以内に税務署・金融機関に納付
納税方法
a.原則現金納付、相続人の連帯納付義務がある
b.延納(分割納付):10万円超の税金を現金納付できない時。延滞税がかかる
c.物納
*延納できない時に利用、物納不可もある(抵当権付・係争中・特別な管理必要・売却不可能)
*物納できる順位:国債・地方債・不動産社債・株式・投資信託・貸付信託動産の順
申告後の更正手続
a.過払い請求は1年以内。税務署の時効は5年・悪質なら7年と長い
b.未分割・家裁の確定・放棄・減殺請求・遺言の発見などは4か月以内に更正

[4]今後の変更
土地所有者不明により、開発や災害対策の妨げになっています
原因は欲しくない土地の相続・住所変更が面倒などです
以下の義務化は正当な理由があれば猶予されます。登録免許税の軽減を検討中です
不動産登記法の改正
a.相続登記の義務化、2024年4月施行
相続したことを知ってから3年以内に申請、登録しなければ10万円の過料
b.登記者の住所変更届の義務化、2026年4月までに施行
変更から2年以内、しなければ5万円の過料
相続等で取得した土地所有権の国庫への帰属に関す法律(新法)2023年4月27日施行
a.引取り要件:更地にする・土壌汚染なし・敷地に崖がない・権利争いがない
b.管理にかかる費用は税金:手放す人は土地管理費用の10年分を負担する(市街地200㎡で80万円ほど)